「歯の破折」とは、歯にひびが入ったり、割れたり、折れてしまう症状です。
噛んだ時に痛んだり、歯ぐきが腫れたりなどの
症状がある時や痛みがないこともあります。
歯が割れてしまった・・・
歯ぐきの上で歯が割れていますか?
歯ぐきの下で歯が割れていますか?
歯の破折は2種類あり、
・ひびや割れている部分が歯ぐきの上で見えている場合は
「歯冠破折」、
・歯ぐきより下で見えない部分が割れている場合は
「歯根破折」 といいます。
歯根破折が起きやすい歯
神経のない歯に歯根破折は起こりやすい?
歯は神経を取る(抜髄)と、歯に栄養が運ばれず
弱くなってしまいます。
すると歯は枯れ枝のように折れたり割れたりしやすくなって
破折をおこしやすいのです。
金属の土台の被せ物をしている歯
神経を取った歯は被せ物の治療をするために
土台を差し込み立てています。
保険適用の治療では金属の土台が使用されており、
これを「メタルコア」と言います。
頑丈な金属の土台に、
強い力がかかると歯の根っこを割ってしまうことがあるのです。
歯ぎしりや噛む力が強い人
歯ぎしり、食いしばり、噛む力が強い人は、
歯根破折がおこりやすいと言われています。
歯ぎしりや食いしばりは、健康な歯をすり減らすだけでなく、
強く長い間無意識の間に過度な力がかかり
歯のひびや割れの症状がおこりやすいです。
また歯並びやかみ合わせが悪く、
特定の場所に大きな負担がかかっている人も
歯根破折がおこりやすいです。
歯根破折のサイン【激痛?】
- 激痛
- 臭い
- 歯ぐきが腫れている
- 歯が響くような浮いたような感じ
- 差し歯がとれる
- 一本だけ動く
- 「パキッ」と音がした
事故などで、神経のある歯が割れると
激痛がおこる場合があります。
見た目は正常で平常時は痛くないのに
噛むと痛みが出たり、疲れた時に歯がうくような違和感を
感じたりすることもあります。
歯の破折は、神経を除去している歯でおこりやすいため
痛みを感じにくく自覚症状がないうちに
細菌が歯のひびから歯根を通じ、
歯ぐきに腫れをおこしたり、白いできものができたりします
(白いできものは根尖病巣の症状でも発生します)。
▶︎根尖病巣について
口臭の原因にもなり得ます。
さらに進行し、歯を支える骨を溶かし始めると、
激しい痛みが発生することもあります。
歯の根が割れてしまったらどうなるの?
歯根破折は、歯の浅い部分でおこった場合は
歯を残せる場合もありますが、
歯根の深い部分での破折や垂直に割れている場合などは
抜歯になり歯を失う可能性が高いのです。
永久歯の抜歯原因の調査によると、
抜歯に至る原因は、歯周病、むし歯に続き、
第3位に「歯根破折」があがっています。
(歯を失う理由で)最も多かったのは歯周病(37.1%)で 、次いで、う蝕(29.2%)、破折(17.8%)、その他(7.6%)、埋伏(5.0%)、矯正(1.9%)の順であった
参考文献:
公益財団法人 8020推進財団 (2018年)
「第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書」2018年
違和感を感じているのにも関わらず
痛くないからと言ってそのまま放っておくと
だんだん歯を支えているあごの骨も溶け始め(吸収)
歯が抜けてしまうこともあります。
さらに骨の吸収が進むと、インプラントやブリッジの治療さえも
できなくなることもあります。
歯の破折の治療法
歯を残せる場合と残せない場合
歯のひびの入り方や割れてしまった部分によって、
治療方法が異なり、
歯を残せる場合と、残せない場合があります。
- 残せる場合
歯ぐきより上での破折 - 残せない可能性が高い場合
歯ぐきより下での破折歯の根っこの深い部分の破折や
縦にパックリひびが入ったり割れたりしている
破折しているところが歯ぐきに対して比較的浅い場合は、
「歯冠長延長術(クラウンレングスニング)」という治療方法で
歯を残せる可能性があります。
ただし、この治療方法を適用するには細かな条件があるため、
適用できる場合が限られています。
歯冠長延長術について
破折してしまった歯の部分を
歯ぐきを切除して、残っている歯を上に引き上げ
その上に被せ物で歯の部分をおぎなう治療です。
破折してしまった歯を抜歯せずに
残すことができます。
ただし、歯の割れやひびの入りやお口の中の環境など
細かな条件を求められる限られた状態で適用できる治療方法です。
歯冠長延長術を行っても、長期的にその歯を使用できないと
診断された時は、抜歯にならざるを得ないこともあります。
歯冠長延長術の治療方法
残せなかった場合は放置せず適切な治療を
残念ながら抜歯になってしまった場合、
そのまま放っておくと、噛み合わせのバランスが崩れてきたり
歯を支えている骨(あごの骨)が衰えていったりと
周りの歯に悪い影響を及ぼし、
他の健康な歯を失ってしまいます。
「1本くらい失ったぐらい・・・」と安易に考えずに
インプラントや入れ歯など適切な治療をうけましょう。
歯根破折を放置するとどうなる?
歯根破折は、自然治癒することはありません。
歯根破折をおこし、細菌の感染がおこると炎症が広がり
歯を支えている骨の吸収(骨が衰える)がはじまります。
そのまま放っておくと、骨が減っていくことで周りの歯にまで悪影響が起きたり、
治療の選択肢が減ってしまいます。
歯根破折を起こさないために
定期検診でむし歯の早期発見!
むし歯の発見が遅れ、神経を抜かなくてはならない状況に
ならないためにも、定期検診でむし歯を早期に発見することが
重要です。
▶︎予防歯科について
ナイトガード(マウスピース)で歯を保護
歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちにしてしまっていることが
多く、特に就寝時の方が強い力で噛み締めていると言われています。
歯を守るために
睡眠時用のナイトガードで歯の負担を防止できます。
マウスピースやナイトガードは
噛み合わせに問題があれば、保険適用で作成することができます。
睡眠時咬合力が覚醒時の最大咬合力を超えており、111.6%であった
参考文献:
補綴誌 J JPn Prosthodont Soc 西川啓介 坂東永一 中野雅徳 (1998年)
「睡眠時ブラキシズムにおける咬合力の研究」
▶︎歯ぎしりについて
かみ合わせの治療
上下のあごの位置が良くない(噛み合わせが悪い)と
歯に大きな負担をかけてしまうため
破折をおこしたり、あごの調子が悪くなってしまったりします。
合っていない詰め物や被せ物があれば、作り替えて
噛み合わせの調整を行います。
歯列矯正が必要な場合もあります。
噛み合わせを整えることで歯が磨きやすくなり
むし歯や歯周病の対策にもなります。
被せ物の土台を金属以外に
神経を抜いた歯の被せ物の治療の土台を硬い金属にするのではなく、
柔らかな土台にすると破折のリスクを減らすことができます。
保険の治療ではレジンコア(プラスチックの土台)を
使うことで歯根の破折を予防できますが、
奥歯など強い力がかかるところには、
使用できないことがあります。
歯科医師と相談が必要です。
ほかには
ガラス繊維強化樹脂を使ったファイバーコアがあります。
弾力性があり、強度が高いので
奥歯にも使用ができます。
白い透明性の高いセラミックの被せ物とも
相性が良いのが特徴です。
歯根破折の発生は
レジンコアやファイバーコアの使用のほうが、
金属の土台(メタルコア)と比べると低いことがわかっています。
歯に違和感を感じたら、歯にひびや歯根が割れているかもしれません。
歯に違和感を感じたら、
歯にひびや歯根が割れているかもしれません。
歯根破折がおこっていると、抜歯しなければならないことが
多いのですが、場合によっては、その歯を残せることもあります。
歯根破折した時、その歯についてしっかりと相談し、
治療方法を検討する必要があります。
まずは、ご相談ください。