「朝起きると顎がだるい」「家族に歯ぎしりの音を指摘された」「気がついたら歯がすり減っている」——そんなお悩みはありませんか?
歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)は、多くの方が無意識のうちに行っている習慣です。成人の約8〜16%に睡眠時の歯ぎしりがあるとされており、決してめずらしいことではありません。
しかし、放置すると
・歯が欠ける
・詰め物が割れる
・顎関節症になるなどのトラブルにつながることがあります。
この記事では、歯ぎしりの原因・自分でできるセルフチェック・そして代表的な対策であるマウスピース(ナイトガード)について、費用や保険適用も含めて詳しくご説明します。
歯ぎしりの3つのタイプ
「歯ぎしり」と一口に言っても、実は3つのタイプがあります。
① グラインディング — ギリギリこすり合わせるタイプ

上下の歯を横方向にギリギリとこすり合わせる動作です。就寝中に多く見られ、音が出るため家族に指摘されやすいタイプです。歯の咬合面(噛む面)が平らにすり減る特徴があります。
② クレンチング — グッと食いしばるタイプ

上下の歯を強い力でギュッと噛みしめる動作です。音がほとんど出ないため、本人も周囲も気がつきにくいのが厄介なポイントです。日中のストレスや集中時にも起こりやすく、顎や肩のこりの原因になることがあります。
③ タッピング — カチカチ鳴らすタイプ

上下の歯を小刻みにカチカチと打ち合わせる動作です。頻度は少ないですが、就寝中に見られることがあります。
多くの方は、これらのタイプが単独または複合的に起こっています。
「歯ぎしり」と「食いしばり」の違いは?
患者さんからよく「歯ぎしりと食いしばりって、何が違うのですか?」というご質問をいただきます。どちらもお口や顎(あご)に大きな負担をかける現代人に多いお悩みですが、実は「歯の動かし方」や「おこるタイミング」に違いがあります。
歯ぎしりはグラインディングのこと
まず「歯ぎしり(グラインディング)」は、上下の歯を横に「ギリギリ」と強い力で擦り合わせるのが特徴です。主に夜の睡眠中にみられますが、寝ている間は無意識のため驚くほど強い力が歯にかかります。その結果、朝起きたときに顎がだるかったり、歯がすり減って平らになったりする症状を引き起こします。
食いしばりはクレンチングのこと
一方の「食いしばり(クレンチング)」は、上下の歯をギューッと垂直に噛みしめる行為を指します。睡眠中だけでなく、日中の起きている時間にも頻繁に起こるのが特徴です。例えば、パソコン仕事に集中しているときや、スマートフォンを操作しているときなどに、無意識のうちにグッと力を入れてしまいます。
この2つの大きな違いは、「音が鳴るかどうか」です。食いしばりは音が鳴りにくいため、本人がまったく自覚していないケースが非常に多く、気づかないうちに進行してしまいます。周囲に気づかれやすい歯ぎしりの方が深刻に思われがちですが、実は音の出ない食いしばりも同じくらい、あるいはそれ以上に注意が必要なのです。
なぜ歯ぎしりをしてしまうのか — 5つの原因
歯ぎしりの正確なメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、以下の要因が複合的に関わっていると考えられています。
1. ストレスや緊張
最も多いとされる原因です。
精神的・身体的なストレスを、就寝中に歯を食いしばることで無意識に解消しようとしていると考えられています。
2. 噛み合わせや歯並びの問題
歯の高さが揃っていない、被せ物が高い、歯並びに乱れがあるなど、噛み合わせに不具合がある場合に歯ぎしりが起きやすくなることがあります。
3. 睡眠の質

浅い睡眠(ノンレム睡眠の浅いステージ)のときに歯ぎしりが生じやすいことがわかっています。飲酒や睡眠不足は睡眠の質を下げ、歯ぎしりの頻度を増やす可能性があります。
「睡眠ポリグラフィー」を用いた睡眠生理学的研究により、睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり)の大半が浅いノンレム睡眠時に発生することがわかっています。
出典元:日本歯科医師会 「テーマパーク8020」「睡眠時ブラキシズム」 歯ぎしり(ブラキシズム:Bruxism)の分類
歯ぎしり・食いしばりなど睡眠中に咀嚼筋が動く現象(Rhythmic Masticatory MuscleActivity:RMMA)の80%以上は、レム睡眠へ移行する浅いノンレム睡眠(N1、N2)で発現することがわかっています
出典元:『Mouth & Body』 「歯ぎしり・食いしばりから考える全身」
4. 生活習慣
飲酒・喫煙・カフェインの過度な摂取は歯ぎしりとの関連が指摘されています。
5. 遺伝的要因
親に歯ぎしりの癖があるからといって、必ずしも子どもに遺伝するわけではありません。
しかし、家族は「同じものを食べる」「睡眠リズムが似る」「家庭内のストレスを共有する」など、生活環境や習慣が似てくるため、結果として子どもにも歯ぎしりが起こりやすくなる可能性があります。
スマホやPC、ゲームなども原因?

スマートフォンを見ているとき、パソコンでのデスクワーク中、あるいはオンラインゲーム(テレビゲームを含む)に熱中しているとき……ふと気づくと、上の歯と下の歯がピタッと合わさっていませんか?
実は、こういった日常生活の中での「集中」や「姿勢」が、無意識に歯を噛みしめてしまう大きな原因になっているのです。
本来、リラックスしているときは「歯が離れている」のが正常です

普段何もしていないとき、上と下の歯がどうなっているか意識したことはありますか?
通常、心も体もリラックスしている状態のとき、上下の歯は触れ合っていません。
- 前歯: 1〜2mmの隙間
- 奥歯: 0.5〜1mmの隙間
食事や会話をしていないときは、このくらいのわずかな隙間が空いているのが、顎や筋肉にとって健康な状態です。
なぜ、スマホやPC、ゲーム中に「噛みしめ」が起きるのか?
現代人の生活に欠かせないデジタルデバイスですが、使用中は「噛みしめ」が起こりやすい条件がそろっています。
- 集中による「体への力み」
画面に長時間集中していると、本人が気づかないうちに体全体に力が入り、グッと「噛みしめている時間」が多くなってしまいます。 - 「うつむきがちな姿勢」による影響
手元のスマートフォンやゲーム機、ノートパソコンを見るとき、多くの人が「うつむきがちな姿勢」になります。下を向くと、お顔の骨格や筋肉のバランスの関係で上下の歯の隙間が狭くなり、自然と接触しやすくなってしまうのです。
無意識の噛みしめ癖「TCH」にご注意ください
このように、「上下の歯を無意識に噛み合わせる癖」のことをTCH(歯列接触癖)と言います。「ギシギシと強く噛んでいないから大丈夫」と思いがちですが、たとえ微弱な力であっても、歯と歯がずっと触れ合っているだけで、歯や顎にはジワジワと大きな負担がかかり続けてしまいます。スマホやPC、ゲームを長時間使うことが多い方は、ぜひ一度「いま、歯が触れていないか?」を意識してみてください。
あなたは大丈夫? 歯ぎしりセルフチェック
以下の項目に複数当てはまる場合は、歯ぎしりや食いしばりの可能性があります。
自覚症状:
- □ 朝起きた時に顎がだるい・こわばっている
- □ こめかみや側頭部に痛みがある(朝の頭痛)
- □ 家族に歯ぎしりの音を指摘されたことがある
- □ 慢性的な肩こりや首のこりがある
- □ 日中、気がつくと歯を食いしばっている
お口の中の状態:

- □ 歯が平らにすり減っている
- □ 詰め物や被せ物が頻繁に外れる・割れる
- □ 歯と歯ぐきの境目(歯の根元)が楔状に削れている
- □ 舌の側面にギザギザした歯の跡がある
- □ 頬の内側に白い線(噛み跡)がある
- □ 口の中に硬いコブのようなもの(骨隆起)がある
- □ 口を開けるときにカクカク音がする
3つ以上当てはまる方は、一度歯科医院でご相談されることをおすすめします。
歯ぎしりを放置するとどうなる?
歯ぎしりを「クセだから」と放置していると、以下のようなトラブルに発展する可能性があります。
- 歯が欠ける・割れる — 就寝中の歯ぎしりでは、体重の2〜5倍の力がかかると言われています
- 詰め物・被せ物の脱落・破損 — 特にセラミックの被せ物は、異常な力で割れることがあります
- 知覚過敏 — エナメル質がすり減り、象牙質が露出して冷たいものがしみるようになります

- 歯周病の悪化 — 過度な力が歯周組織にかかり、歯周病の進行を加速させる可能性があります

- 顎関節症 — 顎関節に負担がかかり、口が開きにくくなる、顎の痛み、クリック音などの症状が出ることがあります

- 頭痛・肩こり — 咬筋や側頭筋が緊張し続けることで、慢性的な痛みの原因に
マウスピース(ナイトガード)による対策

歯ぎしりの対策として代表的で効果的なのが、就寝中に装着するマウスピース(ナイトガード)です。
ナイトガードの仕組みと効果
ナイトガードは、上の歯(または下の歯)に被せるプラスチック製の装置です。以下のような効果が期待できます。
- 歯の摩耗・欠けの防止 — 歯と歯が直接ぶつかるのを防ぎます
- 顎関節への負担軽減 — 噛む力を装置全体に分散させます
- 被せ物・詰め物の保護 — 高額なセラミック治療のあとの「保険」として使う方も多くいらっしゃいます
- 知覚過敏の軽減 — これ以上のエナメル質の喪失を防ぎます
ナイトガードの作り方
- 歯科医院で歯型を取る(所要時間15〜20分程度)
- 1〜2週間後にできあがったナイトガードを受け取り、フィッティング調整
- 就寝時に装着開始
費用 — 保険適用で約3,000〜5,000円
歯ぎしりや顎関節症の治療目的であれば、ナイトガードは健康保険が適用されます。
| 項目 | 費用の目安(3割負担) |
|---|---|
| 初診料 + 検査 | 約1,000〜2,000円 |
| ナイトガード作製 | 約3,000〜5,000円 |
| 合計 | 約4,000〜7,000円 |
※診察内容や使用する素材により多少異なります。
使い始めの注意点
- 最初は口の中に違和感があるかもしれませんが、多くの方が数日で慣れます
- 口が渇きやすくなる場合は、枕元にお水を用意しておくと安心です
- 朝起きたら清水で洗い、専用のデンタルマウスピース洗浄剤などで定期的に清掃してください
- 噛んで穴が開いたり破損した場合は、作り直しが必要です(再度保険適用可能です)
入れ歯洗浄剤をマウスピースに使ってもいい?
「似ているから代用できる」と思われがちですが、実はおすすめできません。マウスピースを長持ちさせるために、以下の違いを知っておきましょう。

1. 汚れの「ターゲット」が違います
- 入れ歯洗浄剤: 食べカスや強力なカビ(カンジダ菌)を落とす「強めの成分」。
- マウスピース用洗浄剤: 唾液のヌメリやタンパク汚れを落とす、素材に優しい「マイルドな成分」。
2. 代用することで起こるデメリット
強力な入れ歯洗浄剤を使い続けると、薄いマウスピースの表面に細かな傷がついたり、白く濁って(変色)しまうことがあります。表面がザラつくと、かえって細菌やニオイが付きやすくなるため注意が必要です。
3. お手入れの注意点
- 専用品を使う: 素材を傷めず、透明感をキープできます。
- 歯磨き粉はNG: 研磨剤が傷の原因に。水か中性洗剤で優しく洗いましょう。
- お湯は厳禁: 熱で変形するため、必ず「水」か「30度以下のぬるま湯」を使用してください。
ポイント!
マウスピースは精密な装置です。せっかくのフィット感を損なわないよう、ぜひ「専用ケア」を心がけてください。
ナイトガード以外にもできる歯ぎしり対策
マウスピースと併せて、以下の対策を日常に取り入れることで、より効果的に歯ぎしりを軽減できます。
日中の食いしばりに気づく「リマインダー法」

パソコンのモニターやスマホの画面に「歯を離す」と書いた付箋やリマインダーを設定しましょう。目に入ったら、上下の歯が触れ合っていないか確認し、意識的に歯を離す習慣をつけます。
安静時の正しい口の状態は、上下の歯が2〜3mm離れていることです。
ストレス管理
ストレスは歯ぎしりの主要な原因です。入浴・軽い運動・深呼吸など、自分に合ったリラックス法を見つけることが大切です。
就寝前の習慣を見直す
- 飲酒やカフェインを控える(就寝2〜3時間前から)
- スマホやPC画面を見続けない(ブルーライトが睡眠の質を低下させる)
- 横向き寝やうつ伏せ寝は顎に余計な力がかかるため、できるだけ仰向けで寝る
歯ぎしりのご相談は当院へ
睡眠中の歯ぎしりは無意識に行われるため、完全に止めることは医学的にも難しいとされています。しかし、放置すると「歯が割れる」「詰め物が壊れる」といった大きなトラブルにつながりかねません。
歯科医院では、治療によって「大切な歯を傷つけないように守る」ことができます。
当院の歯ぎしり対策サポート
- お口の検査&カウンセリング: モニターを使い、歯のすり減りやリスクを確認します。
- ナイトガードの作製: 保険適用で作製可能。1〜2週間で完成し、細かく調整します。
- 定期フォロー: 変化を見逃さないよう、定期検診で噛み合わせをチェックします。
歯ぎしりは自分では気づきにくく、「このままでいいのかな?」と不安になりやすい症状です。まずは歯のすり減り具合をチェックするだけでも構いません。大切な歯を守るために、どうぞお気軽に当院へご相談ください。
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